〝民間力〟警備業の育成を
自民調査会 政府に提言
“世界一安全”と言われてきた日本の治安が揺らいでいる――。自民党の「治安・テロ・サイバー犯罪対策調査会」は5月21日、治安基盤の抜本的強化に関する提言「日本が誇る安全・安心を未来世代に引き継ぐために」を取りまとめた。同27日には提言を高市早苗首相に提出、政策への反映を申し入れた。本紙は7月14日、調査会の会長を務める葉梨康弘衆院議員に提言の狙いについて聞いた。
提言の狙いは、治安を支える基盤の維持・強化だ。背景として、刑法犯認知件数が2021年から4年連続で前年を上回っていることや、匿名・流動型犯罪グループ(トクリュウ)による犯罪やサイバー事案など治安を脅かす出来事が複雑化・広域化していることなどを挙げた。
一方で、警察官希望者が減少していることなどから、警備業界をはじめとする警察の治安基盤を補完する「民間セクター」の育成が不可欠だとした。
提言は、治安を支える“民間力”のさらなる充実として警備業育成を明記。次の取り組みを示した。
▽深刻な「人手不足」解消は急務。適切な労務単価の設定をはじめとする警備員の処遇改善、業務の生産性向上などが必要。
▽重要施設や基幹インフラの警備については、従事する警備員に特別な訓練を行う。防犯カメラなどの警備機器の使用に当たっては安全性に配慮する。それぞれコストに応じた特別な価格設定を行う。
▽重要施設や基幹インフラの警備発注に当たっては、「適切な警備業者」が受注できるよう、インフラを所管する省庁が警察と連携して「発注に関するガイドライン」を作成、同ガイドラインに基づいた指導体制を構築する。
調査会は政府に対し、提言を踏まえ、わが国の重要インフラである「治安」を未来世代に引き継ぐための取り組みの抜本的強化を求めた。
葉梨会長に聞く
――提言の“前文”では、警備業など「民間セクター」の育成の必要性を掲げています。
大阪・関西万博、花博(2027年国際園芸博覧会)など大きなイベントが相次ぎますが、一方で体感治安は相当悪くなっています。そのような中で警備員に働いてもらう機会は増えています。警備業を「警察を補完しながら良好な治安を維持する機関」として位置づける必要があります。その観点から提言では警備業を「治安を支える民間力として育成する」と明記しました。また、人手不足を早期に解消するために、適切な労務単価設定なども盛り込みました。
――重要施設や基幹インフラの警備に従事する警備員に特別な訓練を求めています。
わが国には約60万人の警備員がおり、年齢も仕事内容もさまざまです。「高齢者が働ける警備業」という道も維持しつつ、警備業が持続的に発展していくためには、若い人が魅力を感じて入職してくる仕事である必要があります。
ボディーガードなども若い人には魅力的に映るかもしれませんが、量的な需要がある重要施設や基幹インフラの警備を魅力ある仕事にしていく必要があります。
一方で、これら施設を所管する省庁が警備を警備会社に委託するにあたっては、ほとんど何の指針も示していません。皆無と言っていい。現実には民間任せで、重要施設の警備であるにもかかわらず低価格入札が行われているという話もあります。
そこで、警察の機動隊が国家的な特別な警備を行う際に訓練を行うように、重要施設の警備に従事する警備員には、特別な訓練を受けてもらう。また、機械警備では、使用する機器から情報が抜かれたりすることがないよう安全性への配慮が必要です。特別な訓練と機器の安全性への配慮、ともにコストを要するものですから、コストに応じた、若い人にも魅力ある特別な価格設定を行うことが必要です。
――重要施設などの警備発注に関するガイドラインの作成も求めています。
発注についてのガイドラインは、重要施設や基幹インフラを所管する省庁が警察と協議して作成することが望ましい。会計検査院が財務局仕様書の不備を指摘(本紙7月1日号既報)したように、発注機関は「安ければいい」という考えです。ですからガイドラインが必要なのです。
盆明けくらいには会議を開き、施設を所管する省庁と警察庁を呼んで状況の説明を求めるなど、しっかりフォローアップしていきます。
【葉梨康弘氏】(はなし・やすひろ)茨城3区、当選8回。1959年生まれ。66歳。82年東京大学法学部卒。同年警察庁入庁。警備業などを担当する防犯課(現・生活安全局生活安全企画課)、在インドネシア日本大使館一等書記官などを経て2003年衆議院議員初当選。22年法務大臣。高市早苗首相の後任として党政務調査会「治安・テロ・サイバー犯罪対策調査会」の会長に就任。


