職場環境
「安心に投資」進めよう
安心して働ける職場環境をつくることは、企業が働き手から選ばれる上で欠かせない。人材の採用・定着が慢性的な課題となっている警備業では特に重要と言える。
厚生労働省が毎年発表している「過労死等の労災補償状況」によれば、仕事での強いストレスが原因で「うつ病」などの精神障害を発症し、労働災害として認定された件数は7年連続で過去最多を更新している。直近の2025年度の認定件数を年代別でみると、働き盛りの20、30、40、50代でそれぞれ200件台となっており、この事実は重い。
ストレス原因の類型には「事故や災害の体験」「仕事の失敗、過重な責任の発生」「仕事の量・質」「役割・地位の変化」「パワーハラスメント」「対人関係」「セクシュアルハラスメント」があり、パワハラが全体の2割で最も多い。パワハラ防止は法律で企業に、2020年(中小企業は22年)から義務化されているが、専門家からは「効果が出ていない」との指摘がある。
職場のメンタルヘルス対策では、長時間労働の是正や年次有給休暇の取得がある程度進んでいる一方、ストレスチェックの実施率は横ばいだ。2015年に実施が義務化された従業員50人以上の事業場は84.7%、努力義務の同50人未満の事業場は33.5%。こうした状況を受け、警備業に多い50人未満には28年4月から、年1回の実施が義務付けられることになった。
ストレスチェックでは、従業員が紙やウェブ上で調査票(国推奨の質問57項目)に記入する。検査結果は本人に通知され、高ストレスと判定された場合、医師の面接指導を受けることができる。企業は、指導結果を踏まえた対策を講じなければならない。
義務対象の拡大に伴い、厚労省は小規模事業場向けのマニュアルを作成した。「未実施」の企業経営者は一度目を通し、ストレスチェックの趣旨や実施に向けた準備、実施体制・方法、集団分析などについて確認してほしい。
メンタルヘルス対策では、社内に産業医を置くことが難しい中小企業の場合、産業カウンセラーなど「外部資源」を活用することも望まれる。従業員の定着や生産性向上に資する対策を、負担ではなく“投資”と捉え、進めていってほしい。
【伊部正之】


