カスハラ
危機感を持って対策を
カスタマーハラスメント(顧客等による著しい迷惑行為)への対策が全ての事業者に義務付けられる10月1日まで、あとわずかとなった。改正労働施策総合推進法の施行で義務化される。
カスハラは社会問題として広く浸透した。被害を受けたことで仕事のモチベーション低下や休職、離職を余儀なくされた事例は少なくなく、警備員も例外ではない。うつ病など精神障害の労災認定では、カスハラが原因の上位になっている。
国はカスハラについて「顧客等の言動であって、社会通念上の許容範囲を超え、就業環境が害されるもの」と定義。「顧客等」には警備業の場合、警備先施設の利用者や、交通誘導・雑踏警備現場の通行者などが含まれる。カスハラの該当例としては暴言や威圧的・執拗な言動、土下座の強要などが示されている。
法改正に伴い事業者に義務化されるのは、カスハラへの基本方針を明確にし、従業員に周知することや相談体制の整備、事案発生後の迅速・適切な対応などだ。
警備業における基本方針に関しては、「警備業者はカスハラと判断した場合、毅然とした対応を行う」と明記した全国警備業協会の基本方針(2025年策定)が参考になる。従業員をカスハラから守るメッセージを、経営トップが内外に発信することが大切だ。
カスハラへの対応では、どういう手順を踏むか、会社として今一度、整理しておきたい。対応を打ち切る際の時間・回数の「目安」を決めておくことや、行為者に対する警告文の発出、警察への通報を想定に入れることも望ましい。
一方、カスハラをめぐっては、初期対応で冷静さを欠いたことなどが、顧客等の暴言などに発展していることも指摘されている。
埼玉県警備業協会は先ごろ開いた「警備業課題解決セミナー」でカスハラ対策をテーマにした。講師を務めた社会保険労務士は、社内研修でロールプレイングを行う必要性を指摘。初期対応力の向上のほか、従業員の心理的負担の軽減につながることを理由に挙げた。
人手不足が深刻な警備業はとりわけ、カスハラ問題から目をそらすことはできない。対策の不備が人材難に拍車をかけることへの危機感を持って、業界を挙げた取り組みを進めてほしい。
【伊部正之】


