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特集ワイド 警備力磨く「研修施設」

9月21日
読了時間: 7分

更新日:7 日前

確かな知識と対応力を備えた警備員を育成するには「研修施設」の充実が欠かせない。法定教育に加え、さまざまな警備現場を想定した設備や道具を備え、実際に触れて、動かしながら使い方を学べる環境づくりが進められている。独自の研修施設や教育手法を取り入れ、警備技術の向上と現場対応力の強化を図る3社の取り組みを取材した。

セコム 人財育成の拠点を刷新

セコム(東京都渋谷区、吉田保幸社長)の「セコムHDセンター御殿場」(静岡県駿東郡小山町)は、同社グループの「人財育成」を担う研修施設の一つだ。1982年に設立され、40年以上にわたり社員の教育に活用されてきた。

「HD」は「Human Development(人財開発)」を意味する。研修スペースの拡充や、さまざまな研修への対応を強化するため、23年から建て替え工事を実施。25年4月に新しい施設として再稼働し、26年7月末に施設全体が完成した。敷地面積はサッカーコート約3.5面分の約2万5000平方メートル。新施設の延べ床面積は旧施設の約1.5倍となり、研修設備も充実させた。

災害対応や緊急時の運用を見据え、同センター内にヘリポートを新設した。同社はヘリコプター2機を保有しており、大規模災害や台風、豪雨などの発生時には、事業の継続に必要な物資などの輸送に活用しており、24年の能登半島地震でも物資を輸送した。平時には本社、グループ各社の要請に応じて視察飛行や離島などへの人員、物資輸送にも使っている。

屋内訓練場は560平方メートルあり、最大140人を収容できる。吹き抜けの構造になっており、2階から訓練の様子を見学することができる。大人数による集合研修や実技訓練にも対応できる広さがあり、同社の警備技能などを競う「システム行動全国大会」などの会場になっている。

設備実習室では、警備の現場で扱う設備を使って操作や対応を学べる。自動火災報知設備や非常放送設備、1号消火栓、ポンプ設備などを備え、消火栓から実際に水を出して訓練できる放水訓練室も設けている。セキュリティーシステムのデモ機や消防設備なども活用し、実際の現場を想定した実戦的な教育を行っている。

施設で行われる研修内容は幅広い。新入社員や中途入社社員の研修をはじめ、職種や年次に応じたスキルアップ研修、警備などの実務を担う社員向けの基礎研修や実技訓練、技術部門の高所作業訓練などを行う。2025年度は延べ3000人を超える社員が利用した。

警備業務に当たる社員は、基本動作のほか、異常が発生した際の初動対応、防犯・防災に関する知識、ATMの障害対応などのスキルを学ぶ。顧客への応対やビジネスマナー、チームワーク、コミュニケーション能力なども研修の対象としている。

一方、同センターは警備員などの現場業務に携わる社員だけの研修にとどまらない。営業職や事務職を含むセコムグループの社員が利用し、職種や役職などに応じた研修や教育の場となっている。組織の運営やマネジメント、キャリア形成なども研修内容に含まれ、全国から集まる社員同士が交流する場としての役割も担っている。

研修室は仕切りで分割でき、人数や研修内容に応じて広さを変えられる。研修生向けに140室の個室を整備し、全館をバリアフリー化した。ラウンジや中庭などの交流スペースも設けている。

建物は環境面にも配慮し、太陽光発電などの設備を取り入れ、省エネルギーにも配慮している。

同社では、今後も同センターを人財育成拠点として、警備業務に必要な知識や技能の習得に加え、多様化する社会環境や顧客ニーズに対応できる人財の育成を進める。新たな教育手法や訓練設備も活用し、サービス品質の向上につなげていくとしている。

アルク 金属探知機など設備充実

アルク(東京都新宿区、實川利光社長)は、警備員が配属先で使用する機器や道具の知識を身に付けた上で勤務できるよう、東京中央支社(豊島区)内の研修センターに、警備現場で使われるさまざまな実機をそろえている。

同センターは2016年に開設。以前は社員教育の際、テキストや写真、動画を使っていたが、配属後に初めて機器を扱うことへの不安を減らすため、実際に触れて操作できる環境を整えた。開設後も必要な機器を徐々に増やしてきた。

「自動火災報知機盤」では、仕様が異なる6種類の感知器を用意。学校、商業施設、病院、オフィスビルなど、配属先が変わっても対応できるよう、実際に警報を鳴らして操作する。誤操作を恐れて現場で機器に触れにくくならないよう、研修中に繰り返し扱うことで現場の実戦力を高める。

「非常放送設備」では、警備員自身が館内放送を行う訓練を実施。現任教育では実技時間を設け、講師の模範を見た後、機器を操作して放送する。

「金属探知機」は手持ち式とゲート型を備える。施設警備やイベント警備での出入管理、手荷物検査を想定し、機器の扱いだけでなく、検査を受ける人への声掛けや手荷物確認の手順まで練習する。ゲート型は警報音の有無や感度を設定でき、臨時の現場でも戸惑わないように訓練で使っている。

「交通誘導警備用」には、カラーコーンや誘導旗のほか、ダンプカーや重機の死角を示す教材を用意。運転席から見えない範囲を理解させ、危険な車両誘導にならないよう繰り返し指導している。

鍵の構造や仕組みがわかる教材や消防用ホース格納庫、AED(自動体外式除細動器)、刺股、車いす、消化器なども備え、訓練時に実物に触れて扱いを確認する。

同センターでは年間600~700人が学んでいる。新任教育・現任教育の法定教育のほか、現場に出る前の送り出し教育、交通誘導警備業務検定2級と施設警備業務検定2級の検定に向けた事前教育、自衛消防技術試験の受講対策にも利用しているほか、同社の他営業所から警備員が機器の扱いを学びに訪れることもある。

田村英之執行役員・警備事業担当部長は「研修センターでは、実際の機器を体験してから現場に送り出し、復習にも使っている。警備員が安心して勤務し、新人には長く勤めてもらえるよう、仕事に楽しさを感じて前向きに取り組んでスキルアップしてほしい。今後も教育機器をさらに充実させたい」と話している。

京急サービス 実機で現場想定の実戦教育

京急サービス(横浜市西区、赤倉淳之取締役社長)の福浦研修センター(横浜市金沢区)は、警備業務を実戦的に学べる研修施設だ。2019年に開設した地上3階建ての施設で、警備のほか、同社のさまざまな研修で利用されている。

「警備防災エリア」には、通常の勤務先では再現することが難しい非常時の対応を学べる設備がそろう。自動火災報知設備(自火報)をはじめ、防火戸、排煙設備など、施設警備員が防災業務で扱う実機を設置している。

自火報は施設によって異なるため、2種類を用意。実際に発報させ、館内放送、復旧までの手順を学べる。避難誘導の訓練用に緩降機(かんこうき)も設置し、器具の装着方法や使い方のほか、利用者の誘導方法、建物の外へ降下する際に必要な配慮などを確認できる。

「消火訓練室」にはスプリンクラー、消火ポンプ、消火水槽など、建物に設置されているものと同様の設備を備える。通常の勤務先では、実際に水を出したり設備を作動させたりする訓練には制約があるが、同センターでは実機を使って動きを確認できる。防火シャッターでは、停電した際に手動で巻き上げて開ける方法や、巻き込みなどのトラブルが発生した場合の対応も学ぶ。

このほか、視覚障害者や車いす利用者の誘導方法を学ぶため、白杖や車いすを用意し、声の掛け方や段差への対応を確認している。

同社はグループ会社が運営する商業施設などで施設警備を担うことが多く、エスカレーターへの対応も研修に取り入れている。エスカレーターは内部構造が分かるようスケルトン化しており、新人警備員は起動、停止、ブザー操作など基本的な扱いを学べる。

また、AEDによる救命対応などを研修に取り入れているほか、施設警備業務検定の事前訓練にも活用している。同社社員だけでなく、同業他社が施設を利用して研修を受けることもある。

同社の事業統括本部業務管理部・警備防災担当の山田一人課長は「現場では機器を止めて訓練することが難しく、教える人によって研修内容に差が出ることもあります。現場でうまく対応できなかったことなどをきっかけに、必要な設備をそろえ、研修に取り入れてきました」と話している。

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