特集ワイド 付加価値を高めよう
新北斗警備保障 「軌陸車」誘導訓練
企業が業務の質をより高めて競合他社との差異化を図るうえで「付加価値」は重要だ。警備業では、資格取得と訓練による警備技能の向上、「建設キャリアアップシステム」登録、外国人観光客に対応する英会話研修などで“人材の付加価値”を高めている。さらに、行政の広報紙配布を警備会社が請け負って地域の安全安心につなげる“業務の付加価値”も生まれている。
新北斗警備保障(東京都文京区、鳥山恵司代表取締役)の社員は約300人、うち約70人が「列車見張員」の資格を保有している。
列車見張員は、工事などが行われる線路脇で立哨し、列車が接近すると工事関係者を退避させ安全を守る。専門知識と訓練が必要であり、日本鉄道施設協会、鉄道各社の資格を取得して業務に就くことができる。
同社は5月18日、千葉県内の施設で「重機誘導訓練」を行った。道路と線路の両方を走行できる特殊な工事車両・軌陸車を実際に使用し、鉄道工事の現場で適切な誘導を行うための訓練に44人が参加した。
訓練では▽誘導時の安全な立ち位置▽確実な合図伝達▽周囲確認の徹底▽死角や設備との距離把握――などに取り組んだ。
経験豊富な社員の指導により、軌陸車を誘導し線路に載せる「載線(さいせん)」の技術を磨いた。周囲の安全確認を徹底しながら軌陸車のオペレーターとの意思疎通を図り、安全意識を高め判断力に磨きをかけた。
参加した警備員は「軌陸車の動きとタイミングを体感して、冷静な判断が大切だと理解した」などの感想を述べた。
同社は2024年から、都内の自動車教習所の休校日に合わせてコースを借り、交通誘導警備の訓練も行っている。
4月8日と15日に行った今年の訓練には計100人が参加、片側交互通行、後進誘導、ゲート内の誘導、歩行者の誘導などに取り組んだ。
今回は新たに、最近人気の「電動キックボード」の実車を用いた訓練を実施。逆走など危険な走行を想定し、声掛けによる安全確保について学んだ。隊員自身も乗車して速度を体感し、誘導と利用、双方の視点から対応を確認した。
参加者は「現場の課題である電動キックボードの速度などを体感できて、有意義だった」と話した。
鳥山社長が訓練を視察し、警備員を激励していた。
安芸管理サービス 広島・海田町の広報紙配る
安芸管理サービス(広島県海田町、大成康生代表取締役)は、海田町が毎月発行する広報紙「広報かいた」の配布業務を受託し、今春から町内の約1万4000世帯への配布を行っている。
リーダーを含む社員約7人が配布を担当。住宅を戸別に訪問し、広報紙を手渡して積極的なコミュニケーションを心掛けている。高齢者の世帯には「最近、何か困りごとはありませんか」などと話を聞いて、行政関係者に伝えて対応につなげている。
これまで広報紙の配布は自治会の活動として行われていたが、自治会活動を支えてきた関係者の高齢化や担い手不足で、戸別の配布をどう続けるかが課題となっていた。
同社の大成社長は「地元警備会社として“地域の困りごとに何かお役に立てることはないか”と考えたことが、本事業へ挑戦する出発点となりました」と話している。
同社は、長年にわたり学校の警備業務、防犯パトロールを手掛け、地域の特性や生活環境に関する知識を蓄積してきた。警備業務は1号から4号まで認定を受けており、さまざまな場面を想定した警備員教育、接遇研修に力を入れてきた。
こうしたノウハウを活かし、同社は「見守り」から一歩進んで犯罪や事故を「予防」する視点から地域を巡回し、住民との接点を持つ“警備業ならではの新たな仕組み”として広報紙の配布事業を提案。行政や地元自治会と協議、意見交換を重ね、約1年半の準備期間を経て実現した。
昨年実施された国勢調査では、同社の社員が調査員を務め、その経験が住民への対応や地域の住宅を訪れる業務を行う際の知見となっている。
また、同社は広報紙に関する問い合わせや意見を受け付ける「コールセンター業務」も担当。住民から寄せられる意見や要望を取りまとめ、行政と定期的にミーティングを行っている。
大成代表取締役の話
今回の事業では、一軒一軒を訪問する中で自然と会話が生まれ、住民の皆さまの声をうかがう機会が増えました。その積み重ねは、地域コミュニティの活性化につながり、高齢者の見守りや空き家周辺の防犯、異変の早期発見など、地域の安心・安全を支える活動へと発展しています。
これは警備会社だからこそ実現できる地域密着型セーフティネットの構築であり、新しい警備の形への挑戦でもあります。地域に親しまれ、気軽に声を掛けていただける存在となることも、私たちが目指す警備会社の姿です。
約1万4000世帯と直接つながることができる広報紙配布業務とコールセンター業務は、行政と住民を結ぶ橋渡しになるとともに、将来に向けた安心・安全なまちづくりの一翼を担うものと考えています。
アダムスセキュリティ 「CCUS」登録完了
アダムスセキュリティ(滋賀県草津市、澤井敬輔代表取締役)は、国土交通省などが推進する「建設キャリアアップシステム」(CCUS)に全社員約100人の登録を完了した。
CCUSは、建設業の現場を担う技能者が、保有する資格や現場での就業履歴を業界横断的に登録・蓄積するシステム。技能や経験に応じた適切な評価、処遇改善につなげることが目的で、“若い世代が安心して働ける建設業界”に向けて2019年から運用されている。
登録すると顔写真付きICカードが交付される。建設現場の入退場時に使用し、就業履歴として「いつ、どの現場で、どの職種で働いたか」が記録される仕組みだ。
同社は「交通誘導警備員は建設現場を支える重要な一員であり、CCUS登録は付加価値の一環」として、今年1月から着手し、6月に全社員の登録を完了。CCUSを運用している契約先建設会社に対応できる体制を整えた。
警備員は、ICカードを使用することで「現場で働く他の業種の人たちと一体感がある」と話している。
澤井社長は「昨年12月の改正建設業法施行、標準労務費などで建設業界を取り巻く環境は変化しています。いち早く変化に対応することで、お客さまに安心して業務を依頼していただける警備会社であり続けます」と述べた。
コトナ 「警備の英会話」研修
外国人観光客の増加が続く中、コトナ(京都市、大島伸二代表取締役社長)は、警備員の英会話スキルを高める「英語講習」を5月19日に社内で行った。
英語教育・コミュニケーション支援事業を手掛ける「JOYCOMPANY」の秋山博愛かりたさん、秋山星遥すてらさんが講師を務めた。事前に警備員にヒアリングを行い、同社が担当する観光地やイベントの警備に役立つ英会話のカリキュラムを組んだ。
参加者は、混雑時の誘導、道順や営業時間の案内、注意喚起やルール説明などの実務的な英語表現に理解を深めた。
ロールプレイ研修では、外国人観光客役と警備員役に分かれ、▽「入口、出口、通路」など施設に関連する言葉▽「予約、料金、入場」など観光に関連する言葉▽「混雑、緊急事態、落とし物」など警備に関連する言葉――を使用する場面を想定。外国人役の質問内容を推測しながら説明の幅を広げるトレーニングなどに取り組んだ。
参加者は当初、座学では緊張気味だったが、ロールプレイの実演では、より適切な誘導や案内に活用できる英語表現について熱心に質問していた。
講師を務めた秋山さんは「警備員は日頃から、利用者への配慮や状況判断、臨機応変の対応など、専門性を求められる職業です。英語による案内や説明が可能になれば、インバウンドの需要拡大に伴って、より幅広い方々に専門性を提供することができます。付加価値として英語力を高めることは、警備業のブランド価値向上にもつながると考えています」と話した。
同社は「資格取得や研修を通じて警備員一人ひとりの付加価値を高めることは、業務の質の向上とともに、本人の達成感や充足感にもつながる」として、引き続き英語などの研修を予定している。


