特集ワイド 進化する「給与前払い」
PayPayで給与受取が可能に
警備業で「給与前払いサービス」の導入が広がっている。GMOペイメントゲートウェイ(東京都渋谷区、相浦一成社長)の「即給 byGMO(そっきゅう バイ・ジーエムオー)は、従業員がすでに働いた分の給与の一部を、支給日より前の好きなタイミングで受け取ることができるサービスだ。さらに使いやすくなった新機能や、警備会社の導入事例などを紹介する。
GMOペイメントゲートウェイの企業価値創造戦略統括本部給与Fintech事業部・根本浩史部長に話を聞いた。
「即給 byGMO」は、国内有数の決済代行会社・GMOペイメントゲートウェイが三井住友銀行と提携し、多様化する働き方を支援する給与前払いサービス。2007年にサービスを開始し、導入社数は警備会社を含め1万5000社を超える。
日本国内では労働基準法により、給与は所定日に現金または銀行振り込みで全額を支払うことが原則だ。しかし従業員は、冠婚葬祭で急な出費が必要となった際など、希望すればすでに働いた分の給与の一部を給料日より前の必要とするタイミングで受け取ることができる。「即給 byGMO」を導入すると、煩雑な経理業務なしにスムーズな給与前払いが実現可能で、日払い雇用の給与受取にも活用できる。
同社の調査によると警備業は他の業種と比較して使用回数が多く、給与前払いサービスのニーズが高い業種といえる。人手不足が課題となっている警備業界では、人材確保の強化と定着率向上に効果的な経営手法として導入する会社が増えている。
警備会社ではバックオフィスの効率化にも効果がある。事務担当者がこれまで行っていた、給与の日払い・週払いに関する金額計算や現金の準備、振り込み手続きなどの業務がなくなり、作業負荷を大幅に削減できる。隊員が会社まで現金を受け取りにくる際の手間や交通費もかからなくなる。
「即給 byGMO」の導入の手順は次の通り。
企業はまずシステムに従業員の銀行口座などの情報を登録。次に従業員ごとの利用可能額を企業側で設定し登録する。この利用可能額は、従業員ごとの勤怠実績をシステムにアップロードすることで算出される。これで従業員はスマートフォンの画面で利用可能額を確認できるようになり、可能な範囲で金額を申請すると銀行口座で即時、受け取ることができる。本来の給料日には、前払い分を差し引いた金額を振り込む運用となる。
前払い賃金の準備は(1)デポジット型(2)立て替え型――の2タイプがある。「デポジット型」は、三井住友銀行の企業口座に資金を準備する。「立替型」は、事前準備は不要でGMOペイメントゲートウェイが立て替える。
導入費用はどちらのタイプも無料。月額費用は1企業あたり1万円のみ。企業にはサービス利用料として、従業員1回の利用につき数百円がかかる。
「即給 byGMO」は6月、新機能として「PayPay給与受取機能」のサービスを開始した。「即給 byGMO」で申請した前払い給与の受取方法として、従来の銀行口座に加え、PayPayでの受取を選べるようにするものだ。PayPay給与受取は賃金のデジタル払いに対応した仕組みであり、導入には労使協定や本人同意など所定の手続きが必要となる。
PayPayはスマホでQRコード決済ができるユーザー数7400万人以上が利用する日本最大級のキャッシュレス決済アプリ。買い物や飲食・交通などに幅広く対応し、スマホユーザーの約4分の3が利用するほど社会に浸透している。
根本部長は「今回の機能追加により、利用者の利便性が一層向上しました。現金振込に加えPayPayでも受け取れることで、今まで以上に『すぐに受取り、すぐに使える』シーンが増えます。利便性の向上は、採用競争力をさらに高めることができます」と話す。
▽問い合わせ先 GMOペイメントゲートウェイ 担当・長島氏 ☎︎080―8837―0910
ジャガーノートと連携
「即給 byGMO」は6月、ジャガーノート(東京都渋谷区、平井智仁社長)の管制システム「KOMAINU(コマイヌ)」と新たな連携を行った。
「KOMAINU」を導入している警備会社の隊員は、KOMAINUアプリ画面上から「即給 byGMO」の前払い申請が可能になり、手間と時間を削減できる。例えば隊員は業務終了後、「KOMAINU」で下番報告を行った後、そのまま同アプリ内で給与前払い申請ができる。
隊員は最短で当日中に申請額を受け取ることができ、経理担当者は給与計算時に前払い利用分の控除まで簡単に処理可能となった。今回の連携により、「KOMAINU」を導入した会社は管制業務の効率化だけでなく、給与支払い業務の効率化も同時に実現できるようになった。
「即給 byGMO」と「KOMAINU」は2025年、API連携(ソフトウエアやアプリケーションの機能共有)を開始。これにより管理者は隊員の勤怠実績データをワンクリックで「即給 byGMO」に反映できる仕組みを実現。今回の機能追加で隊員もワンクリックで申請可能となり利便性が高まった。
導入事例① セフティコミュニケーション
セフティコミュ二ケーション(東京都葛飾区、斜木幹郎代表取締役)は、交通誘導警備、雑踏警備を行う警備会社。警備業務を統轄する斜木政幸執行役員統轄部長に話を聞いた。
同社で運用していた経理システムのサービスが終了することになり、新たにシステム導入を検討することになった。日払い賃金の計算に手間と時間がかかっていたこと、経理システムへの入力時にミスが発生していたことから、この機会に勤怠管理と連携した一括管理が可能な経理システムの導入を検討した。「即給 byGMO」は管制システム「KOMAINU」とスムーズな連携が可能とわかり、両システムを導入することに決めた。
システムの操作方法については2026年3月、現任教育の機会を利用して全隊員を集め、説明会を実施。翌4月に稼働をスタートさせた。導入直後は操作にとまどう隊員もいたが、まもなく全員が利用できるようになった。管理者側の振り込みや経理上の煩雑な作業、日払い賃金を受け取りに来る隊員の手間や交通費がかからなくなり、前払いを希望する隊員は給料日まで待たずに必要な金額を手にすることも可能となった。
現在同社では、全隊員のうち約70〜80%が「即給 byGMO」を利用している。求人広告の雇用条件に「作業の翌日に給与支払いが可能」と表記したり、面接時に説明できることから、人材確保に有利となった。
斜木執行役員は「以前、経理担当者は毎日、日払い賃金の集計作業をしていました。その頃の手間と時間を考えると、導入して本当によかったと実感しています。担当者が何かの理由で休みをとっても、システム化されていれば他の人が業務を代行できます。属人化をなくすためにも役立っています」。
同社は今後、作業報告書を電子化して、経理担当者と現場隊員の作業負荷をさらに軽減するなど、社内のDX化を推進する予定だ。
導入事例② グリーン警備保障
グリーン警備保障(東京都杉並区、小林正樹社長)は、交通誘導警備と雑踏警備を主業務とする従業員数約6000人の警備会社だ。首都圏を中心に支社・営業所を展開している。総務部・原田憲太郎部長に話を聞いた。
同社は「即給 byGMO」導入前は、前払いを希望する隊員が各支社で直接現金で支払いを受けていた。本社の経理担当者は支社からの支払い報告をFAXで受けて毎日会計ソフトに手入力し集計して、給与に反映させる運用だった。
1支社で多い日は20万〜30万円の前払い費用が発生し、振り込み作業や手渡しするまでの現金管理など、業務の煩雑さが課題となっていた。業務の効率化とヒューマンエラー削減のため電子化を検討することになった。
3社のシステムが候補にあがり、「勤怠データとのスムーズな連携」という点から「即給 byGMO」に決定。従業員本人の銀行口座に直接振り込まれるため「紛失リスクがなく確実で運用しやすい」と感じた。スマホを持っていない隊員に対しては、支社の担当者が本人の同意を得て「代理申請」できる柔軟な運用も魅力だった。
4支社で約3か月試験運用したあと、2024年7月に全社で導入。操作はシンプルで使いやすいため、講習会は行う必要がなく、操作マニュアルを配布することで十分対応できた。
システム導入後、前払いを希望する隊員はその都度交通費をかけて会社に現金を取りに行く必要がなくなり、希望者は増えたという。手軽に自由に必要な額を引き出すことができることから、多くの隊員に好評だという。
本社の経理担当者はかつて、隊員ごとに前払い金額を積算して給与から差し引き、振り込む業務を手作業で行っていた。システム導入後は複数回の前払いでも積算額がわかるため、集計作業の負荷が大幅に軽減された。


