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特集ワイド 警備業の労働災害防止

6月21日
読了時間: 6分

災害の起こらない職場を

2025年に全国の職場で発生した労働災害(全産業計)は、休業4日以上の死傷者数、死亡者数ともに減少した。一方で、警備業は労災による死傷者数と熱中症による死傷者数が過去最多を記録した。7月1〜7日の「全国安全週間」を目前に控え、厚生労働省労働基準局安全課の土井智史課長に「警備業の労働災害防止対策」について寄稿してもらった。

警備業の労災発生状況

2025年に警備業で発生した労働災害による休業4日以上の死傷者数は、新型コロナウイルス感染症への感染によるものを除くと2360人で、前年比272人(約13.0%)増となりました。

事故の型別では「転倒」が最も多く1020人(全体の約43%、前年比約15.6%増)、次いで「交通事故(道路)」296人(同約13%、同約20.8%増)、腰痛などの「動作の反動・無理な動作」245人(同約10%、同約1.6%減)、「墜落・転落」243人(同約10%、同約14.1%増)となっています。

これら4つの災害で全体の4分3以上を占め、特に「転倒」と「動作の反動・無理な動作」を合わせると、全体の約半数を占めています。

このほか、職場での熱中症による死傷者は199人(同約8%、同約40.1%増)となり大きく増加しています。

災害の特徴と防止対策

全労働者に占める60歳以上の高年齢労働者の割合は年々増加しており、警備業もその例外ではありません。高年齢労働者は、身体機能や認知機能の低下等により、転倒、墜落・転落などの災害が発生しやすくなる傾向があります。また、暑さに対する感受性や体温調節機能の低下により、熱中症にり患する危険性も高まります。

25年に改正された労働安全衛生により本年4月から、高年齢労働者の特性に配慮した作業環境の改善、適切な作業の管理等の措置が事業者の努力義務となり、事業者が講ずべき措置について厚生労働大臣指針を定めて公表しています。

指針では、高年齢労働者が安全で快適に働けるよう、事業者には安全衛生管理体制の確立をはじめ、リスクアセスメントの実施や、その結果も踏まえた職場環境改善等の措置が求められています。警備業の事業場でも、指針を踏まえ、高年齢労働者が安心して安全に働くことのできる職場づくりに取り組んでいただければと思います。

特に取り組む防止対策

■転倒防止対策

転倒災害の主な原因として、濡れた床での「滑り」、床の段差や置いてある物への「つまずき」、階段等での「踏み外し」、さらに、何もないところで足がもつれて転倒すること等が挙げられます。警備業では、夜間での警備、降雨、積雪のある屋外での警備などもあり、警備場所の環境改善が難しい場合もありますが、転倒の原因の除去や作業環境の改善を図ることが重要です。また、警備員の高齢化が進む中で、日頃から体力の向上に取り組むことにより転倒しにくく、転倒しても大きなけがに至らないようにしていくことも重要です。さらに、安全衛生教育の実施により必要な知識を身につけ、意識を向上させることも重要です。

■熱中症対策

警備業の作業現場では、25年6月1日に施行された労働安全衛生規則(第612条の2)に基づき、それぞれの作業場で、(1)熱中症のおそれがある作業者を早期に発見するための体制整備(2)熱中症の重篤化を防止するための措置手順の作成(3)(1)、(2)の体制や手順の関係作業者への周知――を行い、熱中症の重篤化の防止等を進めてください。また、26年3月に策定された「職場における熱中症防止のためのガイドライン」などを踏まえ、(1)湿球黒球温度の値(WBGT値)の把握とその値に応じた熱中症予防対策の適切な実施(2)熱中症の重篤化による死亡災害を防止するための「早期発見のための体制整備」、重篤化防止のための「措置の実施手順の作成」、これらの「関係作業者への周知」(3)糖尿病、高血圧症など熱中症の発症に影響を及ぼすおそれのある疾病のある人に対して医師等の意見を勘案して、必要に応じて、就業場所の変更、作業の転換等の適切な措置の実施――などの取り組みを進めることが必要です。

厚生労働省では「STOP!熱中症 クールワークキャンペーン」を実施しており、7月が重点取り組み期間となっています。この機会に熱中症対策を再確認していただくようお願いします。

また、労働衛生教育には「働く人の今すぐ使える熱中症ガイド」(https://www.mhlw.go.jp/content/11303000/001682823.pdf)をご活用いただければと思います。

■腰痛

警備業における腰痛は、長時間立ったままでの交通誘導警備、運搬警備の際の荷の運搬等さまざまな要因により発生していると考えられますが、(1)体に合った靴、伸縮性のある作業服を着用する(2)重量物は正しい姿勢で取り扱う(3)適宜休憩して姿勢を変えるようにする(4)普段からストレッチをして筋肉を柔軟にしておくとともに、腹筋、背筋など腰部を支える筋肉を補強する――などの対策を講ずることが重要です。13年6月に改正した「職場における腰痛予防対策指針」を参考に取り組みを進めていただきたくお願いします。

具体的な取り組みは「腰痛を防ぐ職場の好事例集」(https://www.mhlw.go.jp/content/11300000/001465336.pdf)をご活用いただければと思います。

■交通誘導警備

道路工事等での交通誘導警備で多い交通事故については、誘導の際に、不特定の第三者が運転する車両を誘導するため、警備員の意思が運転者に伝わりにくく、また、運転者が警備員を十分視認できない場合もあると考えられます。このため、▽相手に分かりやすい合図をして確実に意思を伝える▽安全に配慮した適切な誘導位置に立つ▽夜間でも運転者が視認しやすい衣服等を着用し、適切な装備品を装着して、保安用機材を使用する――が必要です。

■運搬警備

現金輸送車などの運搬警備では、運転時の交通事故による労働災害が多いことから、その防止のため、「交通労働災害防止のためのガイドライン」などに基づき、(1)適正な走行計画の策定(2)乗務前の点呼等による運転者の状況の確認(3)運転者に対する教育の実施(4)交通安全情報マップによる運転者の注意喚起(5)異常気象等の際の安全確保――などの取り組みが求められます。

99回目の「全国安全週間」

全国安全週間は、1928(昭和3)年に初めて実施されて以来、「人命尊重」という基本理念の下、「産業界での自主的な労働災害防止活動を推進し、広く一般の安全意識の高揚と安全活動の定着を図る」を目的に、一度も中断することなく続けられ、今年で99回目を迎えることとなりました。

この長い歴史の中で、わが国の産業構造や労働環境は大きく変化してまいりましたが、職場の安全確保は常に重要なテーマであり続けています。25年の全産業での死亡災害は、関係の皆さまのご努力により過去最少となりましたが、休業4日以上の死傷災害は近年増加傾向となっており、特に、高年齢労働者の増加等を背景とした、転倒や腰痛といった労働者の作業行動に起因する死傷災害の増加や、外国人の労働災害の増加が見られています。

このような状況の中、労働災害を少しでも減らし、労働者一人ひとりが安全に働くことができる職場環境を築くためには、23年3月に策定された「第14次労働災害防止計画」に基づく施策を着実に推進することが必要であり、計画年次4年目となる26年度においても、引き続き労使一丸となった取り組みが求められます。

こうしたことを踏まえ、26年度の全国安全週間のスローガンは「多様な人材 全員参加 みんなで育てる安全職場」としました。

このスローガンの下、本年の全国安全週間では、第14次労働災害防止計画の目標達成に向け、事業者、労働者がともに意識を高めて、機械設備、職場環境等を改善するとともに、安全な作業行動を心掛け、災害の起こらない職場を造り上げていただきたいと考えております。

◇     ◇

全国安全週間を契機として、幅広い関係者が職場における安全衛生を形成する“当事者”であるという意識を持ち、共に安全活動に取り組む文化の醸成にご協力くださいますようお願い申し上げます。

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2026年6月21日号

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