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特集ワイド 変わる「特別講習」

6月1日
読了時間: 6分

25年度 1万人が合格

学科と実技の試験に合格すると、国家資格の警備業務検定を取得できる「特別講習」。直近の2025年度は約1万人が試験に合格した。資格取得は警備員にとって質の高い業務の提供やキャリアップの武器となり、警備会社にとっては事業拡大に結び付けることができる。受講者数減少への対策が課題となるなか、試験方法の変更が行われ、一部の県で独自の取り組みも進んでいる。

警備員特別講習事業センター(東京都)による特別講習は、5種類の警備業務(施設、雑踏、交通誘導、核燃料物質等危険物運搬、貴重品運搬)が対象。それぞれ1級と2級がある。47都道府県警備業協会が同センターから受託して運営している。

2025年度の特別講習は317回行われ、受講者数1万4262人、合格者数1万478人、合格率73.5%。24年度比で実施回数は18回少なく、受講者数が1325人減、合格者数が581人減。合格率は2.5ポイント上回った。

種別でみると、実施回数、受講者数、合格者数とも交通誘導警備業務2級(129回、6489人、4266人)が最も多く、次いで施設警備業務2級(71回、3538人、2903人)、雑踏警備業務2級(45回、1856人、1526人)となっている。

24年度と比較した場合、交通誘導2級の実施回数は9回少なく、受講者数が781人減、合格者数が471人減。25年度の合格率は65.7%(24年度65.2%)で、合格者の平均年齢は41.3歳だった。

交通誘導2級の受講者減少の背景には、交通事故率を基準に指定される「資格者配置路線」との相関関係がある。配置路線が増えると受講者が増えるが、25年度は地域差もみられ、全体としての増加に至らなかった。

また、警備会社が既に資格者を十分に確保していることがあるほか、シニア層の受講者の伸び悩みがある。そのため、シニア層の受講意欲をいかに高めるかが課題となっている。警備員特別講習事業センターの邨田昌英・業務統括課長は「60、70代が勉強しやすい、内容を理解しやすい方法を検討している」と話す。

減少の背景には講習会場の事情もあるようだ。施設側の働き方改革による利用時間の制限に伴い、広い会場を確保することが難しくなったケースがあり、受講者を増やすことができなかったという。

「実車」使わない実技

特別講習の交通誘導警備業務2級では4月から、実技試験方法の一部が変更された。

変更は(1)大旗を使用した基本の合図(2)素手による工事車両の後進誘導要領(3)事故現場における二次災害防止要領――の3科目。(2)と(3)に関しては実際の車両を使わずに、カラーコーンを車両に見立てる方法に切り替わった。二次災害防止要領では、助手席ドアやハッチドアの開け閉めの動作がなくなった。

警察庁の許可を得た変更に伴い、交通誘導2級の実技は屋内での実施が可能に。講習会場先の事情により、広い駐車場を借りにくくなった事例もあるなか、会場の選択肢が広がったことは大きい。

さらに屋内実施のメリットとして、天候に左右されなくなり、熱中症の予防も見込まれる。今年度は9月に、交通誘導2級の特別講習を行う協会がある。

車両の設営や撤去にかかっていた時間がなくなり、実技訓練により多くの時間をかけられるようにもなった。

一方で、実車を使わなくなったことで受講者からは「イメージがわきにくい」との声も寄せられている。そのため、指導教育責任者を対象に研修会を開いたり、「事前講習」で実車を使った映像を流したりしている協会もある。

特別講習の実技では、昨年4月にも試験方法の変更が行われた。施設警備業務2級の「巡回実施要領」と貴重品運搬警備業務2級の「駐車場所・運行中の周囲の警戒要領」で、録画映像を視聴して解答する「VTR試験」に切り替わり、瞬時の判断を求めるようになった。

従来の記述式からチェック式にも変更され、受講者の負担軽減につながった。

警備員特別講習事業センターでは今後も、実際の警備現場に即し、時代の変化にも合わせた実技試験方法に変更することを検討していくという。

4時限分をeラーニング

特別講習では、学科講義の一部がeラーニングに切り替わる。来年4月から、全国一斉に移行する予定になっている。

移行は学科7時限のうち4時限分。関係法令(警備業法、憲法、刑法など)や応急手当、護身術という「基本教育」をeラーニング化する。

警備員特別講習事業センターによると現在、配信動画のコンテンツの制作を進めている。動画は1本(1時限)50分で、計4本。特別講習講師による講義とナレーション付きのパワーポイントで構成する方向だ。

受講者が自宅などで事前に学習するeラーニングが導入されると、会場での4時限分の対面式講義がなくなるため、特別講習の時間が短縮される。現在は2日間とも午前8時〜午後6時(昼休憩1時間)がベースとなっているが、導入後は午前9時〜午後4時(同)となる。短縮に伴い、特別講習講師や協会職員の負担軽減が期待される。

また、午後6時まで会場を貸さないところが増えていることから、午後4時までになれば会場を借りやすくなる。

同センターではeラーニング導入に当たり、受講者や協会向けの「説明映像」をつくる。邨田課長は「事前にしっかりとした周知を行う」と語った。

独自の取り組み進む

埼玉県警備業協会(炭谷勝会長)は2025年度から、特別講習での警備業務検定合格に向けた「事前講習」の学科にeラーニングを導入している。

事前講習は47都道府県警備業協会で行われているが、eラーニング導入は埼玉警協が唯一。受講者ニーズや利便性を踏まえ、講習会場での対面式講義から切り替えた。

25年度の事前講習は雑踏警備業務1級と、施設、雑踏、交通誘導、貴重品運搬の各警備業務2級で計11回行い、538人が受講した。

eラーニングで配信している動画は、対面式講義をベースに埼玉警協が制作した。動画のコンテンツは関係法令や応急手当などで、テキストをナレーションで読み上げている。動画の本数と時間は種別で多少違いがあり、「8〜9本」「2時間〜2時間半」。集中力が持続できるよう、1本20分以内を目安に制作した。学科試験のポイントが網羅され、受講者や特別講習講師から「分かりやすい」との評価がある。

動画の配信は事前講習の約1か月前から特別講習の直前まで行われ、受講者は自宅などでパソコンやスマートフォンで視聴。協会側は個別の学習状況を把握できるようになっている。

埼玉警協の事前講習は1回につき2日間(1日目=学科・実技、2日目=実技)。受講者をA・Bの2グループに分けている。グループAの1日目は午前が学科、午後が実技で、グループBの1日目は午前が実技、午後が学科。講習会場での学科の受講は任意で、午前・午後とも実技を受けることができる。

学科でのeラーニング導入は、受講者アンケートで実技の時間を増やしてほしいとの要望が多く寄せられたことが背景にある。時間の増加に伴い、実技を一気に教え込まず、号令や動作、資機材の使い方を段階的に指導できるようになったといい、25年度は実技試験の合格率が上がった。

一方、eラーニングの学習状況と学科の合格・不合格は比例する傾向にある。埼玉警協の特別講習講師は25年度の学科合格率を踏まえ、「いつでも、どこでも、何度でも――のeラーニングのメリットを受講者に伝えきれなかった」と受け止めている。

そこで26年度の事前講習の学科では、3種類((1)高難度(2)基本教育(3)業務別教育)の計90問程度の模擬試験を用意。希望する受講者が会場でチャレンジしている。

模擬試験後に、(1)では特別講習講師がその場で解説を行い、(2)と(3)では動画で解答を配信。受講者に「今の実力」を知ってもらい、試験本番までの学習に生かしてもらっている。

eラーニング導入から1年が経過したことを受け、特別講習講師は「まだデータを取り切れていない。もう少し長い目で成果をみたい」と話す。

埼玉警協の25年度の特別講習(計12回)では受講者数が前年度比で83人増加した。事務局は「先進的な取り組みに興味を示してくれた警備会社が増えている」としている。

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