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特集ワイド 警備員の「熱中症」を防ぐ

5月1日
読了時間: 7分

WBGT測定、水分・塩分を

これからの季節、警備現場での発生が危惧されるのが「熱中症」だ。厚生労働省は2025年、死亡者数が多い警備業などを念頭に労働安全衛生規則を改正、対策を強化した。さらに同省は今年、改正省令の徹底や熱中症り患リスク低下のため、包括的に熱中症防止対策をまとめた「熱中症防止ガイドライン」を策定した。同ガイドラインを元に警備業での熱中症防止対策を考える。

「熱中症」とは、高温多湿な環境下で「体内の水分やナトリウムなど塩分バランスが崩れる」「体温の調整機能が破綻する」――などして発症する障害の総称だ。具体的な症状には「めまいや失神」「筋肉痛や筋肉の硬直」「大量の発汗」などがあり、適切な処置を怠ると死亡に至ることもある。

熱中症防止の基本はWBGTの把握。WBGTは人体と外気との熱のやりとり(熱収支)に着目した指標で(1)湿度(2)日射・輻射熱(3)気温――を取り入れたもの。「暑さ指数」とも言われ、熱中症の発生リスクを表す。

全国各地のWBGTの当日の実測値や翌日の予想値については、環境省が4月22日から「熱中症予防情報サイト」で提供を開始した(10月21日まで)。WBGTが高く、熱中症発生リスクが特に大きくなる場合には「熱中症(特別)警戒アラート」を発する。

警備業務の実施に当たっては、「熱中症予防情報サイト」を活用したWBGT把握とともに、実際の警備現場でのWBGT測定が欠かせない。

測定は日本産業規格(JIS規格)に適合した測定器を用い、警備員を配置する現場のWBGTを測定する。測定で得られたWBGTを熱中症リスクの有無を示した「WBGT基準値」と照らし、現場の熱中症発症リスクを判断、必要な対策を講じる。

対策には「作業環境管理」「作業管理」「健康管理」「労働衛生教育」がある。

熱中症を防止するためには、「健康管理」や「労働衛生教育」などにより、まずは警備員自身が熱中症発生の仕組みや発生原因、症状、対処法などを知ることが大事だ。

新任教育や現任教育などを活用した教育や、熱中症防止についてのリーフレットなどの配布による情報提供に努めたい。

熱中症防止の労働衛生教育は、厚労省が「熱中症予防管理者労働衛生教育」として教育カリキュラムを示している。教材についても同省が運営するポータルサイトに掲載している。

熱中症は、当日の朝食の未摂取、睡眠不足、前日の大量飲酒、体調不良などによって引き起こされるケースが多い。作業開始前に隊長や現場のリーダーが各警備員の体調をチェックすることが必要だ。糖尿病や高血圧症、心疾患、腎不全などの疾病も熱中症の発症に影響を及ぼす。これらの疾病を持つ警備員は、産業医などの意見を参考に炎天下での長時間の配置を避けるなど適正配置を行う必要がある。

作業環境管理には「WBGT値の低減」「休憩場所の整備」などがある。

WBGT値を低減する方法には、直射日光や地面からの照り返しを遮ることのできる簡易な屋根やパラソルの設置がある。近年は移動式のスポットクーラーを用いる警備現場もある。

休憩場所の整備は、熱中症を発症した人の重篤化防止にも欠かせない。作業場所近くに日陰のある涼しい休憩場所を設け、氷や飲料水などを備え置き、熱中症を発症した人には、休憩場所で身体冷却など重篤化防止の措置を行う。熱中症を発症した人を一時的に休憩させる場合は、一人きりにせず、症状に応じて病院へ救急搬送する。

一方で、警備業務はスーパーの駐車場や建設工事現場など発注者(契約先)の事業場で行われ、自ら休憩場所を設けることが困難な場合が多い。事前に発注者(契約先)が設ける休憩場所を警備員も使えるよう交渉するとともに、警備員にも周知しておくことが必要だ。

作業管理には「作業時間の短縮」「水分・塩分の摂取」「服装による身体冷却」「作業中の巡視」――などの取り組みがある。

作業時間の短縮は、現場で測定したWBGTの値が「WBGT基準値」を大幅に超える場合、原則として警備業務を行わない。やむを得ず業務を行う場合は、単独での警備を控え、休憩時間を長めに設定する。

警備員一人ひとりの作業時間短縮のためには、交代要員の確保(警備員増員)が欠かせない。国発注の建設工事では、2025年12月に国土交通省が熱中症防止のために「建設工事における猛暑対策サポートパッケージ」を策定。熱中症対策に必要な経費などを確保することとしている。熱中症防止ための警備員の交代要員増員も対策の対象となるものと思われる。

水分・塩分の摂取は、熱中症防止の基本的な取り組みだ。警備員の自覚症状の有無にかかわらず、水分・塩分を業務中に定期的に摂取するよう指導し、摂取状況を記入できる表などを作成、巡視の際に確認する。また、尿の回数が少ない、尿の色が濃い場合は、体内の水分が不足している状態であることを事前に周知する。

高齢者の場合は、加齢による身体の感覚機能低下などにより、喉の渇きを感じにくくなる場合もある。トイレを我慢するために水分補給を控える人もいる。熱中症防止ために水分・塩分摂取が必要なことを周知し、喉の渇きにかかわらず定期的な摂取を指導する。

服装による身体冷却は、通気性の良い服装や「ファン付きベスト」など送風や送水により身体を冷却する機能を持つ服やヘルメットの採用がある。これらの機能を待つ服は一定程度有効だが、それのみで熱中症防止は困難なため、他の対策と組み合わせて使用することが望ましい。

作業中の巡視は、警備員の水分・塩分の摂取状況の確認、体調の変化の早期発見の上で重要だ。巡視の際は各警備員に声掛けし、体調の変化を把握する。

複数の警備員が従事する現場では、警備員互いの健康状態に留意するよう、また、体調が悪くなった場合には、周囲の警備員やあらかじめ定めた担当者に連絡するよう指導する。

単独での警備が避けられない場合、ウェアラブルデバイスなどの導入で警備員の体調変化のリアルタイムでの把握を行う。

死傷「ワースト5」に警備業

2025年に全国の職場で発生した熱中症による死亡者と休業4日以上の業務上疾病者の合計「死傷者数」は、統計を取り始めた05年以降で最多の1681人だった。死亡者数は15人で、24年同期比で50%減少した。

業種別の死傷者数は、製造業が最も多く337人、次いで建設業278人の順。警備業は商業221人、運送業201人に次ぐ186人で「ワースト5」だった。

業種別の死亡者数は、建設業が5人で最も多く、次いで警備業の2人。21年以降の5年間では、建設業48人、製造業15人、警備業15人。

月別の発生状況は、約7割が7月または8月の2か月間に集中。死亡者数も同様の傾向だった。21年以降の5年間をみても、7月または8月に集中していた。また、多くの年で6月〜7月の暑くなり始めた時期に急激に死傷者数と死亡者数が増加、その後に横ばいとなり、9月に急激に減少する傾向があった。

時間帯別の発生状況は、午前中や午後3時前後の被災者数が多いが、いずれの時間帯でも発生。過去5年間では、死傷、死亡ともに25年と同様の傾向だが、気温が下がった午後5時台や午後6時台以降に死亡に至るケースもあった。日中は重篤な症状はみられなかったにもかかわらず、作業終了後や帰宅後に体調が悪化した事案もあった。

熱中症から命を守るカード 中災防

常に携帯できる「カード」が熱中症から命を守る!――。厚生労働省所管の労働災害防止団体「中央労働災害防止協会」(中災防・東京都港区、筒井義信会長=日本経済団体連合会会長)は熱中症から作業者を守る“ポケットサイズ”のカード「熱中症緊急対応カード」を発売中だ。

カードは汗や水に強い「ユポ紙」を使用。サイズはポケットや財布に収まる54×86ミリメートルの4ページ・二つ折りの仕様。

熱中症発症時の救急措置、熱中症が疑われる症状などを記載するとともに、カード保有者が熱中症を発症した際の会社や医療機関など緊急連絡先の記入欄もある。監修は厚労省の熱中症予防検討会の座長なども務める産業医科大学の堀江正知副学長。

厚労省が今年3月に公表した「熱中症防止ガイドライン」では、「作業場所を管理する事業者は、作業者が熱中症を発症した際、作業者の緊急連絡先や医療機関への連絡が望ましい。そのために作業者は、緊急連絡先や可能であれば既往歴を記載した『カードの携行』『着用している服の分かりやすいところに貼る』こと」などを明記している。

警備業は通常、契約先の現場で業務を行うため、会社で緊急時の連絡体制を決めても掲示する場所がない。中災防は「警備員一人ひとりに同カードを携行させることは、緊急時の対応の役に立つ」と同カードの活用を勧めている。定価は550円(本体500円+税10%)。

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