特集ワイド 伸ばそう新入社員
更新日:8月20日
桜の季節、新入社員は希望を胸に緊張して社会人の一歩を踏み出した。少子化と人手不足の中で「社会に不可欠な警備業」を選んだ若者を大切に育成しなければならない。教育によりスキルを磨いて力を伸ばし、職場環境を整えて定着を促進することは、企業と業界のさらなる発展に結び付いていく。警備各社の入社式、新入社員の育成・定着に向けた取り組みについて取材した。
スキルの基礎づくり
東海警備保障(名古屋市北区、馬場善志雄代表取締役)が主体となり警備会社5社などで構成する「TONETグループ」は、高校新卒の3人(男性2人、女性1人)を迎えて4月1日に入社式を行った。
同日から4月10日にかけて新入社員の集合研修を平日に社内で行い、13日からはそれぞれの配属先で研修を実施した。
研修を担当する同社の人材統括課は「警備員の育成にとどまらず『セキュリティー業界の将来を担う人物』を育成する第一歩」として、新入社員のスキルの基礎づくりに取り組んだ。
警備業法で定める新任教育に加えて、時流に沿った幅広い教育カリキュラムが組まれている。ビジネスマナーに加え「コンプライアンス(不正のメカニズム、ハラスメント防止策など)」「情報セキュリティー(ビジネスの機密保持、SNSや生成AI利用の注意事項など)」を新入社員は学んだ。
また、「ユニバーサル(車椅子を使用する人などへの応対)」では、聴覚、視覚、色覚などでさまざまな特性を持つ人がいることに理解を深め、ツールを使用して苦労を疑似体験、応対の原則を身につけた。
さらに、近年の犯罪の巧妙化や国際的な大規模イベントの安全対策を踏まえ、グローバルな視点を研修に取り入れている。
3月に東京・池袋の大型商業施設内で発生したストーカー殺人事件など“職場における暴力行為”の防止と対応に向けて、新入社員は米国労働安全局の指針を学んだ。さらに、海外の法執行機関で用いられる実務の基礎(トラブル事案に段階的に介入し安全に収束させる方策など)の習得に励んだ。
心肺蘇生法は、米国心臓協会の高度な水準による訓練に取り組んだ。「守るべき資産の定義」「脅威評価」などセキュリティーの原則論についても学びを深めた。
新入社員は次のように話している。
「警備という仕事は奥深いもので、専門的スキルが求められる職務であることを知った」。
「研修で学ぶ内容は現場で実務に就く最低限のもので、今後もスキルアップを図らなければならないと感じる」。
「配属先でのスキル向上に努め、検定資格取得にも挑戦したい。さらに学ぶことで要人警護など高い専門性が必要な業務を経験したい」。
「未来を創造する人」目指す
セントラル警備保障(CSP・東京都新宿区、市川東太郎社長)は、82人(男性65人、女性17人)の新入社員を迎えた。
新入社員は5日間にわたり、都内の研修センターで新任教育を受けた。警備員教育、社会人教育に加え、懇談会を兼ねた昼食会ではテーブルマナーも研修し、4月1日の入社式に臨んだ。
市川社長は「世の中の『安全・安心・快適』のベースとなるインフラをお客さまに提供している使命の重い仕事を担う会社です。皆さんも胸に誇りを持って仕事をしていただければと思います。派手で目立つ仕事ではありませんが、地道に安全・安心・快適をつくっていく。入社に至るまで、皆さん一人ひとりが頑張ってきたことを大切にしながら、仕事に取り組んでください」と激励した。
さらに、中期経営計画「想い2030〜連携して実現する」に触れて「今は目の前の仕事を一つひとつ覚え、自分の力にしていく段階ですが、会社がどこを目指していくのか、何を大切にしていくのかは『想い2030』に書かれています。迷った時や悩んだ時には立ち返ってみてください」と呼び掛けた。
新入社員を代表して中央事業部・嵐優菜さんは、次のような答辞を述べた。
「新入社員は『すべての人々の幸福を追求する』という理念に共感して入社を決意しました。創業60周年という節目の年に入社できましたことを大変光栄に感じ、当社が築いてきた60年の歩みと先輩方のご尽力を胸に、私たちも『チャレンジを続けて未来を創造する人』を目指して、日々学び続けてまいります」。
「陸上部」でスタート!
東洋警備保障(TOSEC24・金沢市、上田絋詩社長)は、大学の新卒者1人と行政機関からの転職者1人を迎えた。
上田社長は入社式で「AIやDXが進む時代でも、最後に人を守るのは『人』です。信頼される警備員を目指してください」と激励して新社会人の門出を祝った。
同社には「TOSEC24陸上競技部」があり、7人(内勤者3人、警備員4人)が所属している。学生時代に陸上競技を経験した社員が中心となって2020年に発足、日本陸上競技連盟に登録した。県内企業で社内に陸上部を置いたのは初で、県内外の大会、各地域の記録会などに出場。砲丸投げでは石川県トップクラスの選手が在籍し、全国での上位入賞を目指す。マラソンランナーも所属して各地の大会に出場している。
今回の新卒社員は、入社日に同部に入部した。学生時代に陸上部で短距離種目に取り組み、社会人になってからも競技を続けたいと考えていた際、地元の警備会社に陸上競技部があることを知ったという。「安全・安心を守る業務に携わりながら、陸上競技にも打ち込める環境に魅力を感じました」と志望理由を話した。
同社には、スポーツを希望する警備員の勤務形態として「アスリート規定」がある。規定の条件により、試合日の特別休暇扱いや試合の遠征費用が会社負担となる場合がある。
強豪フットサルチームでのプレーを目指し練習時間を確保できる働き方を希望して昨年入社した警備員は、出勤日数を減らして練習を行う勤務体制で業務とスポーツの両立を図っている。
同期の「勉強&交流会」
ALSOK山形(山形市、本川哲久社長)は、11人の新入社員(男性9人、女性2人=高校卒7人、大学・専門学校卒4人)を迎えた。
入社式で本川社長は、業務の心構えとして「誠実・正確・強力・迅速」について説明したうえで「『継続は力なり』であり、経験を積むことで、高みに向かっていけるのです」と呼び掛けた。
新入社員を代表して小川健吾警備士は「お客さまに信用される社員になれるよう、部活動や日々の学業で行ってきた努力を活かし、人格の向上に努めてまいります」と決意を述べた。
同社は、若手社員の育成と定着促進に向けて、入社2・3年目の若手社員が参加する「スキルアップ勉強会&交流会」を2024年から実施している。本社、支社などの各部署に配属された同期社員が「横のつながり」を持って社内コミュニケーションの活性化を図る取り組みだ。
同社は「同期が互いに、悩みや仕事の工夫などについて共有することで、安心感が得られるようです」としている。
定着面では、同会を開始した24年度の新卒社員12人、25年度の同11人のうち、退職はそれぞれ2人にとどまり、早期離職の防止に効果があるという。
2月21日に開いた同勉強会では、産業雇用安定センターの講師を招いて、相手を尊重しながら自分の意見や要望を伝える「アサーティブ・コミュニケーション」について学んだ。交流会では活発に意見を交換した参加者は「他の部署の人たちと話すことは興味深く、“気付き”を得ました」と感想を述べた。
エルダー制度、ノート活用
アサヒセキュリティ(東京都港区、赤木猛社長)は、94人の新入社員を迎えて都内で入社式を開催した(4月11日号既報)。
同社は、新入社員の育成・定着化を図るため「エルダー制度」を長年にわたり導入している。新入社員1人に対し年齢の近い先輩社員1〜3人が、教育担当者として入社6か月後まで付いて業務の教育・指導を行うとともに、プライベートや生活面も含めてサポートしている。
毎年3月には、新入社員のエルダーに任命された社員に研修を行い、コミュニケーションスキルを磨く。社員は効果的な指導教育のポイントなどを学ぶ。
また、「コミュニケーション・ノート」を制作し、2019年度の新入社員研修から活用中だ。ノートはA4サイズで、新入社員は日々の業務の中で感じたことや疑問点などをつづる。これをエルダーの社員や上長が閲覧して、メッセージや助言を書き加える形式。eメール、SNSとは趣が異なる「手書きの文字」でコミュニケーションを促進するツールだ。ノートには同社の理念、会社概要、ビジネスマナーの基本知識なども掲載されている。
同社は「日頃から課題を見つけることは早期離職の防止につながると考えています。新入社員はノートを通じて自分の成長を実感しているようです」としている。


