特集ワイド 「記録と報告」スマートに
更新日:8月20日
ソニー(東京都港区、田中健二社長)は、現場に設置したICカードに隊員のスマートフォンをタッチし、画面をタップするだけで上・下番や巡回の記録ができるワンタッチ警備記録システム「パトログ」に今月、新たに「スマート報告機能」を追加した。さらなる業務効率化を実現する新機能と、警備会社の「パトログ」導入事例を紹介する。
巡回チェックをスマホ画面で
ソニーが2024年4月に販売開始した「パトログ」は、交通系や電子マネーなどでなじみ深い「非接触ICカード」の技術を使用し、現場のICカードにスマホをタッチすることで上・下番や巡回の記録を行う。記録データはクラウド上に保存され、業務の状況を管理者がリアルタイムに共有できる。データは報告書や請求書などの作成に活用することも可能だ。
現場に必要となるのはICカードだけで、電源や設置工事が不要なため容易に設置できる。タッチする隊員のスマホにはアプリをダウンロードする必要がなく、簡単なボタン操作のみで使用することが可能。管理者は電話による連絡や書類の転記などの煩わしさがなくなり、業務負荷を軽減して人為的なミスもなくなる。
パトログは販売開始以来、警備会社のDX推進に活用されてきた。25年には新機能として、隊員が予定時間にスマホをタッチしていない場合に管理者のモニタリング画面にアラートで通知する「自動アラート機能」を追加。隊員の遅刻や欠勤を早期に把握できるようになった。
パトログは発売以来、細かいアップデート(改善)を重ねてきたが、4月末に大きな機能追加を予定している。ソニーのエンタープライズソリューション事業部サービス&インテグレーション事業室・林大作統括課長と営業部・金澤秀香ビジネスデベロップメントマネージャーの両氏に話を聞いた。
林氏は「パトログは警備業の上・下番の勤務管理、巡回時にログ(記録データ)を残すためのサービスを提供してきました。それを発展させて、隊員が巡回時に行うチェックリストの点検・記録・報告業務を効率化できないだろうか、と考えました。記録を紙の資料で残したり、集計して管理する煩わしさを改善できるのでは、と思ったのです。それを『スマート報告機能』と名付け、パトログの機能に追加することにしました」と開発経緯を話す。
金澤氏は「スマート報告機能」をはじめとした新機能の内容について、次のように説明した。
これまで隊員は巡回・点検の際、紙のチェック表を持って現場確認するケースが多かった。管理者は紙の状態で管理したり、後で紙の内容をPCに入力し直す必要があった。
スマート報告機能は、カードタッチの際にスマホ画面にフォーム(管理者がチェックしてほしい内容)が表示される。隊員はチェック後に「完了」ボタンを押して確認を終了する。フォームの設問は管理者が自由に設定でき、各拠点に設置したカードとひも付ける。
隊員は上・下番の電話報告、紙に記録していた業務を、スマホ画面のみで対応可能となる。管理者は、隊員が報告するとリアルタイムにモニタリング画面で確認できる。データは通常のパトログデータ同様、クラウド上で管理されるので、いつでもダウンロードして確認や報告に活用できる。
隊員は自分のスマホをICカードにタッチすると自動でブラウザー(インターネット用ソフト)が起動し、画面のON・OFFを押す操作を行う。「なりすまし防止」などセキュリティー向上の観点から、パスワードを入力してからボタンを押す機能を追加した。現場操作の利便性からこれまで通り「パスワードなし」の機能も、ユーザーの方針で選択可能だ。
これまでカードをタッチした際にスマホに表示される画面のボタンは「ON・OFF」のみだったが、ユーザーが自由に変更できるようになった。操作する隊員がよりわかりやすいように「上番・下番」「出勤・退勤」「異常あり・異常なし」などに変更したり、「ON」や「完了」などボタンを1個にすることも可能とした。
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林氏は「今回のアップデートは、現場で勤務する隊員の方々に向けて『スマホに表示されるパトログ画面を少しでも見やすく、操作しやすくする』、管理者の方々に向けては『記録の確認や保存の負担を軽減する』ことを目的に実装したものです。今後は記録から報告書を自動作成できる機能など、さらに警備業を支援できるシステムに発展させていきたい」と語った。
鈴与セキュリティサービス
鈴与セキュリティサービス(静岡市、岩品浩司社長)は1977年4月設立。社員数は約400人で、1号警備を主業務として2号警備、3号警備を行う。200年以上の歴史を持つ物流・建設・食品などを営む企業で構成する鈴与グループの一社だ。静岡支店の鈴木慶隆取締役支店長兼清水営業所長と石川享市清水営業所所長代理に、導入事例を聞いた。
同社はパトログ導入前は、隊員の勤怠管理を手作業で行っていた。そのため月末に確認作業や集計作業が集中し、翌月中旬にならないと資料がまとまらない状況があった。
昨秋、都内で開催された建設業の展示会「建設DX展」でシステム化に向けた情報収集を行った際、ソニーのブースで「パトログ」についての説明を受けた。システムの設置や操作が簡単で、コストパフォーマンスもよいことから、静岡支店内で試験運用することを決めた。
隊員に向けての教育は、高齢者も含めてスマホの使い方にたけた隊員が多かったため、短時間のレクチャーで十分だった。ICカードにスマホをタッチしてワンプッシュするだけのシンプルな操作なので問題なく使うことができた。
2025年10月、同社静岡支店内の時間管理が求められる巡回警備で試験的に導入。巡回ポイントにICカードを設置し、パトログの基本的な機能について効果を試した。すぐに効果は確認できた。
管理者は、隊員の巡回記録をタイムリーに把握できるようになった。事象が発生したときの時刻が明確なため、より正確な報告書を作成し契約先に報告できるようになった。ICカード設置の簡易さや、システムの使いやすさも想像以上だった。
静岡支店に導入して約5か月が経過し、少しずつ使用する支店数を増やしながら活用を広げている状況だ。今後は社内で活用を広げるとともに、パートナー企業の業務でも広く展開していく計画だ。
石川所長代理の話 これまで人員を増やして対応してきた業務も、今後は採用者数が限定されることから「効率化」にかじを切らなければなりません。警備業務のDX化は避けて通れない道であり、今後も進めていきたいです。
鈴木取締役の話 将来的にはグループのさまざまな業種にパトログの活用を広げたい。また人手不足など同じ課題を持つ警備会社に向けて効果を伝えたいと思います。新機能が追加されることはソニーの担当者の方から聞いており、導入したシステムが発展していくことは喜ばしいことと期待しています。新機能活用の際には確認できる情報量が増えることをクライアントに説明し、現在担当している現場以外でも利用していくことを提案したいと思います。
「Webhook」を実装
パトログの機能として、ユーザーのサーバーや他のシステムとデータや機能のやり取りを行う「API連携」がある。今回のアップデートで、API連携に加え「Webhook(ウェブフック)連携」を新たに機能追加した。
APIはユーザーから要望があった都度、データを送信する通信方式。一方のWebhookは、「スマホによるカードへのタッチ」や「ON・OFFボタンを押す」などのイベント(事象の情報)が発生した際に、自動的にデータを送信する通信方式だ。
Webhookのメリットは、「リアルタイムのデータ連携」や「手作業を減らす効率化・自動化」、「不要な通信をなくすコスト削減」などがある。
Webhookの使い方の一例として「状況把握の即時性」がある。例えば隊員が予定時刻までに出勤しなかった場合、管理者はPC上のパトログ画面を開いて確認しなくても、メールによるアラート通知を受け取ることができるようになる。
パトログはパートナー企業ともシステム連携を図っている。ジャガーノート(東京都渋谷区、平井智仁社長)の「KOMAINU(コマイヌ)」、KYODOU(東京都千代田区、澤橋秀行社長)の「ShiftMAX(シフトマックス)」の2つの管制システムとは既にAPI連携を果たしており、今後はWebhook連携への移行も検討している。


